こんな温かさ。






散りゆく桜に手を振って、

軽自動車でぽこぽこと

埼玉のお友だちの家まで行ってきました。


山の麓の

ゆるやかな坂をのぼったところ。

うっそうと茂る木々を背に

どーんと大きな三角屋根と、漆喰の壁が光っています。


台所のすぐ裏は

山頂へと続くマイナールートの入り口になっており

山を守り、守られているような不思議な感じがする場所です。


ゼリーのように透明な川、

生き物の気配、

広い土間も、山と向かい合わせのキッチンも。

素敵なところは沢山あるけれど、

木と木のあいだに渡された

物干し用の竹竿がとくにいいなと思いました。

いい家は、洗濯を干す場所も

こんなふうに自由に選べるんだと

山の暮らしに想いを馳せていました。




翌朝、玄関を開けて外に出ると

ひんやりした山の空気に胸がいっぱいになりました。

家の裏から山道に入り

ただ道なりに落ち葉を踏みしめて歩きます。

斜面からわずかな光に枝を伸ばしたヤマツツジが

とても健気で美しかった。


慣れない山道が思いのほか疲れたので

帰ってもう一度横になると、

山の余韻と、布団のふかふかで眠くなりました。

ぽやぽやしながら

こんな温かさ、あんな優しさを思いかえしていると、

しっかりしていなくてよかった、

こんなわたしでもまあいいかと思えてうれしかった。


道をすすむほどに

自分の未熟さが顕になっていく反面、

いつもすぐそばに

なまえのない優しさが在ったんだなとしみじみ思います。

それに気づかずに歳をとっていくのはさびしいから、

もう一度布団に潜って

朝ごはんの時間まで。

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